射撃訓練

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「これを持ち歩かなければどうにも落ち着かない性分なのでな。まあ気にすることでも無いだろう。」 「いや…気にするなとか…無理…。」 「五月蝿い慣れろ。次行くぞ。」 刀を鞘にしまって歩き出す華里奈。 だが、 「あ、おい!」 あることに気付き、華里奈を引き止めた。 「何だ?」 「そっち行ったら戻っちゃうんじゃないのか?」 「…!」 思い出したように足を止める華里奈。 そして回れ右。再び歩き始める。 もはや内心でも突っ込む気にはなれない。 「…なあ、そんな方向音痴でよく今まで任務とかやってこれたな。」 「ああ、どういう訳か任務となると方向感覚がはっきりする。私にも理由は分からないが。」 ……都合の良いオツムだな…。 「まあ一応理由はあるらしいが、それを説明するのは黒船を率いて来たペリーに日本が開港を拒む理由を1から説明するくらい難しい。」 何だその例えは。お前そんなキャラか? そんな事を話しながら次に行き着いた先は…とても広い部屋だった。 そこには筋トレ用のトレーニング器具が数え切れない程置かれている。そのまんま街で見掛けるトレーニングジムのような部屋だ。 「少なくとも銃の反動に耐えられるようになるまでここに篭り切りになる。」 「えっ…じゃあ筋トレだけ?」 「文句を言うな。これで一通り回った筈。戻るぞ。」 結局3時過ぎまで歩き回っていた。華里奈も早いところ就寝したいに違いない。 だが、 「いや、俺はまだ良いや。先に帰ってろよ。」 「…早く寝た方がいい。初日でくたばりたくは無いだろう。」 ただでさえ馴れていない過酷な訓練を寝不足という状態で行うのは無理がある。しかし守は断じて部屋へ戻ろうはしなかった。 「俺は早く鍛えて華里奈や古賀さん達と同じように戦場へ赴きたい。一分一秒も無駄にしたくないんだよ。」 そして守はトレーニング器具の1つに歩み寄っていった。 「…………この馬鹿が。」
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