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「昇降口開いてりゃ良いけど。」
守が駄目元で昇降口のガラス製の扉に手を掛けた。
すると、微塵の抵抗をみせる事なく扉が開く。
「開いた…のか…?」
見ると鍵が掛けられていない。
「……無用心だな。生徒の荷物盗られたらどうすんだよ。」
「守ぅー。」
後ろから舞が追い掛けて来た。
「姉貴…。待ってろって言ったじゃ…。」
「退屈なのぉー。堅い事言ってんじゃないわよぉー。」
あー、そうですか。
仕方なく舞を連れ、2階の教室へ向かった。
「ん~?」
「どうした?」
「今なんか聞こえたんだけど~。」
「何も聞こえなかったよ。空耳じゃねーの?」
「そうかな~?」
「酔っ払いの感覚なんかアテになるかよ……。ん?」
守は廊下の窓からある物を見つけた。
(職員室の電気が点いてる……。)
その時だった。
「……ッわ!」
信じられない物を見て小さな悲鳴をあげる。
「守?」
「……嘘だろ…。」
守は目を懲らしてもう一度職員室を見た。
職員室の窓に……何か、液体のような物が飛び散っている。
……真っ赤な…液体が…。
「姉貴。…帰ろう。」
「え~?ゲーム取りに来たんじゃないの~?」
「良いから…!」
その時、
「誰だお前らは!?」
突然廊下の奥で誰かが叫んだ。声からして男性だろう。
「え?え?」
守と舞は声のした方を見詰めている。
コツ…コツ…
足音が大きくなってくる。
(この声…まさか…。)
コツ……
足音が消えた。同時に叫び声の主が窓から差し込む月明かりに照らされる。
この男は……
「高田…先生…?」
守のクラスの担任教師、高田だった。
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