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「守君、1つ良い事を教えてやる。飯、出来てるぞ。」
守と華里奈の後方を指差す古賀。
「…あ。」
咄嗟に振り向き厨房の窓口に目をやる。そこには無造作に置かれた2つの焼き魚定食があった。
「何だよ…出来たなら出来たって教えてくれれば…!」
「あそこで待っていなかった私達が悪い。文句を言うな。」
大分前から置かれていたようだ。駆け付けた時には既に遅し。試しに味噌汁を啜ってみたが…ぬるい。
…やってしまった。
仕方ない。古賀と舞に相席し、これ以上の温度低下を招いてしまう前に完食した。
「食べた気がしないが…行くぞ。」
華里奈は空の食器を一まとめにすると、席を立った。
「おう。じゃあな姉貴。」
2人は席を立ち、電光石火の如く食堂を飛び出した。
「……あの…古賀さん。…弟の事、よろしくお願いしますね。あいつ、なんか危なっかしいから…。」
不安に駆られた舞の声。
実の弟があのような命のやり取りの現場へ行くのだ。本当は無理にでも引き止めたいだろう。
「…任せなさいな!俺らがちゃーんと見ててやるからさ!」
予想していた通りだが、どこか元気付けられる返答。
「はい…お願いします。」
弟はもう自分の足で立ち上がり、歩き始めた。
にも関わらず、姉である自分がどうしてぬくぬくと部屋で暮らしていけようか。
今度は………私が立ち上がる番だ。
「あと…もう1つお尋ねしたいんですが………医務室ってどこにあるんでしょうか?」
私は私なりに、私にあった道を歩くために。
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