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「………やれやれ、出来の悪い孫を持ったものじゃのぅ」
優しい口調でそう言った婆ちゃんは、和らいだ顔で微笑んだ。
「漕ぐんじゃ心一」
「……はぁ?」
「ええから漕ぐんじゃ!アタシには雨音ちゃんを生き返らす事はできんが、想いを伝える事くらいはできるかも知れん」
………えっ?
本当か?
………今の俺には、それだけでも充分だ。
俺は疲れ果てた足に再び力を入れ、ペダルを漕ぎ出した。
次第にスピードに乗るに連れ、また雨が俺の顔に打ち付けた。
そのせいで前がよく見えないが、俺はペダルを漕ぐ足を緩めなかった。
………伝えたい。
雨音にちゃんと、『好きだ』って伝えたい。
決して実る事のない初恋だけど、伝えなきゃいけないんだ。
………お願いします……神様………。
「……今までで一番ええ願いじゃよ心一」
婆ちゃんがそう言った次の瞬間、俺が漕いでいたペダルの辺りからまっ白な強い光が放たれた。
俺は思わず目を覆って、薄目で光が弱まったのを確認してからゆっくりと目を開いた。
「………うえっ!?」
俺は思わず目を疑った。
何故なら、両側のペダルの辺りから巨大で真っ白な綺麗な鳥の翼が生えていたからだ。
しかもその翼は、優しい白い光を放っている。
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