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俺が目覚めて最初に目にしたのは、海に沈みゆく夕日だった。
「綺麗だな………って海!?!?」
俺はパニクって思わず叫んじまった。
海なんて見たの、一体何年ぶりだろう。
《そうか、俺田舎に引っ越して来てたんだっけ………》
軽トラに揺られている現状を把握して、俺は冷静さを取り戻した。
ふと俺は、海とは反対方向を見た。
すると、今度は広大な山々が巨大な壁のように間近に聳え立っていた。
こんな沢山の緑を見るのは、生まれて初めてだ。
結局完全に眠りから覚めてしまった俺は、流れゆく景色をずっと見つめていた。
目に映るのは、青い海と緑の山ばかり。
ゲーセンもない。
デパートもない。
バッティングセンターもない。
洒落た服屋もない。
それどころか、コンビニすらない。
《こんな所で、俺は生きていけるのだろうか……》
俺は本気で不安になった。
そんな事を考えて頭を抱えていたら、軽トラが遠くに見える古い家に向かっている事に俺は気づいた。
ずっと昔に一度だけ見た記憶がある……。
そう。アレが俺が暮らす事になる、亡くなった婆ちゃんの家だ。
周りには、建物らしき物は一切見えない。
この現実に、俺は最早言葉すら出なくなってしまった。
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