飛鳥祭

5/28
前へ
/246ページ
次へ
婆ちゃんと祭りについての話をしている間に、あっという間に雨音の家に到着した。 「じゃあちょっと待っててな婆ちゃん」 俺はそう言ってババチャリを止めて、雨音の家の玄関に向かった。 ピンポーン 「はーい?」 インターホンを鳴らして少しすると、そう言って扉が開いた。 出てきたのは、前に一度あった事のある雨音のお袋だった。 「あら、こんばんわ心一君」 「こっ、こんばんわ」 俺はそう言ってペコリと頭を下げた。 相変わらず綺麗な人だ。思わず少し照れてしまう……。 「雨音を迎えに来てくれたんでしょ?もう少しで支度できると思うから」 雨音のお袋がそう言い終わるや否や、廊下をドタドタと走って来る音が聞こえてきた。 勿論足音の主は雨音である。 「待たせちゃってゴメンね心ちゃん♪」 そう言った雨音の姿に、俺は言葉を失った。 いつも寝癖全快の雨音がきちんと髪を整えて、綺麗な髪飾りを付け、かわいらしい金魚の柄の青い着物を着ていたのだ。 「…どうかしたの心ちゃん?」 「えっ?いっ、いやっ、何でもねぇ!」 そう言って俺は慌てて雨音から目線を反らした。 正直見とれてた。 女ってのは髪型や服装変えるだけで、あんなに綺麗になるもんなんだな………。
/246ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18310人が本棚に入れています
本棚に追加