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「それじゃあ雨音、心一君に迷惑かけちゃ駄目よ」
「迷惑なんてかけないよ~!ねぇ心ちゃん?」
「さぁ、どうだろうな?」
「もう!心ちゃんの意地悪~!」
そう言って頬を膨らませた雨音を見て、俺と雨音のお袋は思わず同時に笑ってしまった。
「それじゃあ行って来るねお母さん♪」
「いってらっしゃい。雨音をよろしくね心一君」
そう言って微笑んだ雨音のお袋に、俺はペコリと頭を下げて答えた。
「浴衣が車輪に引っ掛からないように気をつけろよ」
「わかってるわかってる♪」
そう言って雨音はババチャリの荷台にチョコンと乗り、俺の腰に手を回した。
「そっ、そんじゃあ行くぞ」
俺は思わず赤らめてしまった顔を隠すようにしてそう言って、ババチャリを漕ぎ始めた。
そんな2人の姿が見えなくなった後で、玄関で見送っていた雨音の母親からゆっくりと笑顔が消え、不安を抱えているような、そんな悲しい表情に変わった。
「このままずっと夏が続けばいいのに………ねぇ雨音?」
雨音の母親は日が暮れかけた真夏の空に向かってそう呟くと、家の中へと入っていった。
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