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しかし、やはりなんだかんだ言っても金魚すくいという物は祭りに来たからには一度はやってみたいもんだ。
別にすくえたら雨音にやればいいしな。
そう思った俺は、水面に向けて金魚すくいの道具を構え、何となく雨音とは反対側の隣をチラリと見てみた。
すると、
「……官九郎、お前何やってんだ?」
そこには『金魚すくい』であるにも関わらず、水槽で釣りをしている官九郎がいた。
「おぉ心一!祭りに来てたんじゃな!俺は見ての通り『金魚釣り』をしとるんじゃ!」
「いやいや、『金魚すくい』だからなここは」
「わかってないの心一、魚は釣るもんじゃろが!俺に釣れない魚はないんじゃ!」
官九郎はそう言うと、再び釣りに意識を集中させた。
つーか、ルアーが金魚よりデカイのに釣れる訳がねーだろうが!
「ねぇねぇ♪見てみて心ちゃん♪」
「あぁ?」
雨音に呼ばれて俺が振り返ると、そこには容器の中でピチピチ跳ねる山盛りの金魚を持った雨音がいた。
「えへへ♪こんなに取れたよー♪」
「取りすぎだろ!てかそのままだと金魚が息できなくて死んじまうぞ!」
「あっ、ホントだね」
そう言って雨音は、山盛りの金魚をドバドバと水槽に戻した。
その後、結局雨音は金魚を2匹だけ貰って俺と共に『金魚すくい』の出店を出た。
ちなみに俺がすくえたのは0匹。別に飼いたくなかったからいいんだけどさ……。
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