going to ド田舎

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「おーい心一!自分の荷物は自分で運ぶんだぞ!」 「後でやるよ。俺ちょっとその辺散歩してくるわ」 俺は親父にそう言って婆ちゃん家から離れた。 とりあえず今は、荷物運びよりも散歩でもして心を落ち着かせる方が先決だ。 10分くらい歩いただろうか。 目に映るのは相変わらず田んぼ、畑、森、川、そしてポツポツと見える民家のみだ。 《マジで何もねぇよ。親父達は俺にここで米でも作らせるつもりか?》 そう思って俺は深い溜め息をついて、川の近くに腰を下ろした。 何気無く川の中を覗き込むと、小せぇ魚が沢山泳いでいた。 「何の魚だコイツ?あっ、もしかして『しらす』か?」 「『しらす』じゃなくて、『メダカ』だよー!!!」 「うわぁ!!」 ボチャン! 突如後ろから大声で話しかけられた俺は、情けない声を上げて川に落ちてしまった。 「ゲホッ!冷てぇ!!」 「ごめんなさーい!大丈夫?」 そう言って俺を川へ落とした犯人は、俺に手を差し伸べてきた。 そいつは頭はボサボサの黒髪のショートカットで、上は無地の白いTシャツ、下は普通のジーンズという何ともラフな格好をした俺と同い年ぐらいの女だった。 俺はとりあえず女の手を掴んで立ち上がった。 「あっ!外人さんだ♪」 「………はぁ?」 俺が立ち上がるなり、この女は俺を指差してそう言ってきた。 最早、意味不明としか言いようがない。 「なんで俺が外人なんだよ!?」 「だって髪の毛が茶色いじゃん♪」 「これは染めてんだよ!!」 俺は思わず大声でそう言ってしまった。 畜生、俺とした事がこんな女にペースを乱されるなんて…。 しかも女は、染めたと言ったのにまだわからないと言ったような顔をしている。 「あっ、こんなド田舎育ちじゃあ髪染めれる事事態知んねーか。とにかく俺は日本人!わかったか?」 「はいはーい!わかったぁ♪」 女はそう言って元気に返事をした。 今まで出会った事のないタイプだな。 正直、コイツ苦手だ。
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