飛鳥祭

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いつまでも落とし穴に見入ってる暇のない俺は、すぐにまたババチャリを漕ぎ出した。 それからもいくつかトラップに引っ掛かっている参加者を見つけたが、いちいち立ち止まっている時間はないので俺はババチャリを漕ぎ続けた。 「こりゃあ案外出遅れて正解だったかもな。お陰でトラップにかからずに済んだ訳だし」 「じゃがこのままでは優勝は無理じゃぞぃ」 「んな事はわかってるよ!」 そう言って俺はハンドルを切って、折り返し地点を回った。 しかし困った。このままでは婆ちゃんの言う通り優勝は無理だ。 先頭グループと思われる集団は微かに見えるのだが、このオンボロじゃあ追いつけそうにない。 でも頑張らねーとな。雨音と約束しちまったし……。 「なぁ婆ちゃん」 「何じゃ?」 「レースが終わるまででいいから、チャリのサビを落としてくんねーかな?後は自力で頑張るからさ」 俺はダメ元で婆ちゃんにそう頼んでみた。 「……仕方ないのぅ。可愛い孫の為じゃ。願ってみぃ」 「サンキュー婆ちゃん!じゃあ頼むよ!」 そう言って俺は願い事に意識を集中させた。 ババチャリのサビを落として欲しい…… 雨音との約束を果たす為に…… 頼むよ婆ちゃん! そう願った次の瞬間、ババチャリのボディ全体が輝き出し、輝きが収まった後にはまるで新品のようにピカピカと輝く、サビなんて何処にもないババチャリが現れた。
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