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そしてその瞬間、今まで錆び付いていたペダルが一気に軽くなった。
よっしゃ!これならいける!
「うぉりゃぁぁぁ!!!」
俺は雄叫びを上げながら、一気にババチャリのスピードを上げた。
そして、遂に先頭グループが把握できる位置まで追いついた。
先頭グループは3人。
そのうちの2人は夏と官九郎。
残りの1人は、驚く事にまだ小学校中学年ぐらいの男の子だった。
よくここまで粘る事ができたな……。
そんな事を考えている間も俺はババチャリを漕ぐスピードを緩める事はなかったので、遂に先頭グループの中に追いついた。
「おぉ心一、ようやく追いついたのぉ!」
追いつくなりそう声を掛けてきた官九郎は、少し前を走る夏の自転車に釣竿の釣針を引っ掛けて、楽々と引っ張ってもらっていた。
「官九郎……セコいぞお前!」
「戦術じゃって心一。なっちゃんも気づいてないしのぉ」
官九郎の言う通り、官九郎の前を走る夏は『キーホルダーがあれば幸せになれる』と呟くように連呼しながら、汗だくになって必死に自転車を漕いでいた。
「ったく」
俺はそう呟いて、先頭グループにいた小学生の男の子をチラリと見た。
小学生の男の子は今や俺より少し後ろを走っていた。
普通なら小学生に勝ちを譲ってあげるべきなのかも知れないが、今回ばかりは譲る訳にはいかないんだ。ゴメンよ。
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