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「心一」
「何だよ婆ちゃん?」
俺は必死にババチャリを漕ぎながら、話しかけてきた婆ちゃんにそう言った。
「後ろを走っとるあの少年じゃがの、神様が憑いとるぞぃ」
「えぇ!?」
婆ちゃんのいきなりの暴露に驚いて俺は思わず後ろを振り返ったが、残念ながら雨音がいないと俺には神様が見えない。
「まさか婆ちゃんみたいに、あの小学生が乗ってるチャリに憑いてんのか?」
「違うわぃ。自転車じゃなくて少年自身に神様が憑いておる。いわゆる『守護霊』という部類の神様じゃの」
「ふーん。で、その神様がどうかしたのか?」
「さっきからその神様が何やらアタシに話しかけておるのじゃが、なんせ距離があるから何を言っておるのか聞き取れんのじゃ」
そう言って婆ちゃんは、耳に手を添えて真剣に聞き取ろうとする仕草を見せた。
「婆ちゃんの耳が遠いだけじゃねーの?」
「しっかり聞こえとるぞ心一」
俺はかなり小さい声で呟いたつもりなのだが、残念ながら婆ちゃんには聞こえていたらしい。
つーか、その神様が伝えようとしている事は何か重要な事なんだろうか?
小学生があんなに必死に頑張っているのだから、何か訳ありなのかも知れない。
だが、俺にも雨音との約束があるのだ。優勝を譲る訳にはいかない!
そう決意した俺は、小学生には悪いとは思いながらもラストスパートをかけた。
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