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もうゴールの神愛樹はすぐそこ。
そして、手強い敵は葬った。
つまり、俺の勝利はもう確定したと言っても過言ではないのだ!
「心一よ」
完全に脳内で確定した勝利に酔いしれていた俺は、婆ちゃんの声で現実に呼び戻された。
「んだよ婆ちゃん?」
「ほれ、あの少年を見てみぃ」
婆ちゃんにそう言われて後ろを振り返ると、驚くべき事にまだ粘っている小学生の姿があった。
小学生の体力じゃとっくの昔に限界が来ているだろうし、何処かで転んだらしくて膝から血を流している。
「何であそこまで頑張るんだ……?優勝しても貰えるのはただの御守りだってのに……」
「理由が知りたいならスピードを落として少年と並んでみぃ。そしたら少年の神様が何を伝えたいか聞き取る事が出来るからのぅ」
婆ちゃんにそう言われて、俺は少し迷ったがおとなしくスピードを落として小学生と並んだ。
小学生は必死すぎて俺と並んだ事にも気づいていないのか、俺の方は見向きもしない。
「婆ちゃん、神様の言いたい事はわかったか?」
「『勝ちを譲ってほしい』と言っておる」
「はぁ!?」
無理な注文に、俺は思わず声を上げた。
「何だよそれ?理由がわからなきゃそういう訳にもいかねーだろ?てか神様ならこのガキの『優勝したい』って願いを叶えてやりゃいいじゃん」
「心一、前にも言うたが願いを叶えられるアタシのような神様は、数えられるくらいのごく少数しかいないんじゃよ。一般の神様が出来るのは、見守る事やささやかな幸せを与えられるくらいなんじゃ」
婆ちゃんのその説明に、俺は改めて婆ちゃんの凄さを理解した。
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