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「ねぇねぇ、ここで何してたの?」
「あっ?別に何もしてねぇよ」
「息もしてないの?」
「アホかっ!!」
またもやペースを乱された。不覚………。
「川眺めてたんだよ。引っ越してきたばかりで暇だったからな」
「へぇ~♪引っ越してきたんだ!え~っと…え~っと………」
「あぁ、心一だよ俺の名前。神田心一」
女が呼び方に困ってたみてぇだから、名前を教えてやった。
「心一君かぁ♪私は海野雨音(ウミノアマネ)!よろしくね♪」
海野はそう言って微笑んできた。
と言うか、会った時からずっと微笑んでやがる。何がそんなに楽しいんだろうか………。
「ねぇねぇ、暇だったらいい所に連れてってあげようか?」
「へっ?あぁ、でも俺引っ越してきたばかりだから、まだ荷物の整理とかが…」
「じゃあ連れてってあげる♪」
……おい、聞いといて俺の意見完全無視かよ。
やっぱりコイツ苦手だ………。
10分後、俺は海野に連れられて森の中を歩いていた。
なんだかんだ言っても、戻って引っ越しの荷物整理なんてゴメンだったので、コイツの言う『いい所』とやらに連れてってもらう事にした。
つっても、半強制的に連れて来られたんだけどな。
「おい海野、どこまで行くんだよ?」
「もう少し♪ランランラ~ン♪」
海野は鼻歌を歌いながら、何処で拾ったのかわからない2、3枚葉の付いた木の枝を振り回して楽しそうに歩いている。
何がそんなに楽しいんだろうか?
「ほら!見えてきたよ♪」
「えっ?」
海野がそう言って木の枝で差した先には、『となりのト〇ロ』にでも出てきそうな立派な木が、空をも貫くくらい高く天に伸びていた。
正直、少し感動しちまった。
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