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「おっ、お前ら勘違いすんな!優勝したのは俺じゃなくて、小学生のガキ……いや、立派な小学生の兄貴だよ」
俺はそう言って、途中で訂正した。
あの子はもうガキじゃねぇ。立派な兄貴だもんな……。
「はぁ!?何なのよも~ぅ」
「怒りぞんじゃよまったく」
そう言って夏と官九郎はヘナヘナと地面に座り込み、深い溜め息をついた。
ったく、コイツらはせっかくのチャンスを台無しにしやがって……。
そう思って俺がチラリと雨音の方に目をやると、雨音は溜め息をつく夏と官九郎を見て無邪気に笑っていた。
その時、
バァン!!
いきなり響いた爆発音と共に、夏の夜空に綺麗な花が咲いた。
「おぉ!花火か」
「今年の花火は一段と気合いが入っとるのぅ!」
そう言って俺達は揃って空を見上げた。
俺は何となくチラリと雨音に目をやった。
雨音の瞳には花火が映って、キラキラと光ってとても綺麗だった。
だが、どこか寂しそうな目をしていた……。
その寂しそうな目の意味を俺が知るのは、まだ先の事………。
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