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俺が足を踏み入れた夏の家は、悲しい程に生活感丸出しだった。
「汚ねぇなぁオイ。てか俺が取ってやったキム〇クの抱き枕も洋服に埋もれてんじゃねーかよ……」
そう呟いた俺の目線の先には、飛鳥祭の時に俺が射的で取ってやったキム〇クの抱き枕が悲しそうな表情をしながら洋服に埋もれていた。
「こんな家に長居は無用だな。さっさと酒取って戻ろう」
俺はそう独り言を言って冷蔵庫のある台所に向かおうとした。
だが、
「んっ?何だコリャ?」
俺の目に、机の上に置いてあった3枚の封筒が目に入ってきた。
「……手紙か?」
俺はそう呟いて手紙と思われる封筒を1枚手に取り、裏返してみた。
【雨音へ】
封筒の裏には、夏の字でそう書かれていた。
俺は咄嗟に他の2枚の封筒も手に取り、裏返してみた。
すると、そこには予想通り『心一へ』『官九郎へ』と書かれていた。
そう。コレは多分俺達への別れの手紙だ………。
「……ったく、柄にもねぇ事してんじゃねーよ!」
そう言って俺は封筒を机の上に放り投げた。
正直中身がかなり気になる。
だが、やはりまだ見るべきじゃないだろう。
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