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………だが気になる。
酔っ払っていたとはいえ、別れの手紙が置いたままになっている家に俺をパシリにした夏も悪いんだ。
結局誘惑に負けた俺は、自分宛の封筒を手に取った。
「自分宛の手紙を見るだけなら別にいいだろ………うん、いいだろ多分」
俺はそう呟いて無理矢理自分を納得させると、自分宛の手紙の封筒を開いた。
【心一へ
アンタ今どうせ『似合わねー事しやがって』とか思ってるでしょ?本当に素直じゃないわよね。
でもそういう素直じゃない所、よく考えると私と少し似てるわよね。
都会から突然こんな田舎に追いやられたアンタの気持ちは、私もよくわかるわ。私もそこそこ都会の街で育ったから。
アンタは一見少し不良っぽくて、口悪くて、素直じゃなくて、生意気な性格だけど、いい奴だって事は私も雨音も官九郎もちゃんとわかってるから、もう少し周りに心を開きなさいよ。
それじゃあ元気でね。
榎本夏より】
………ちっ、こんな時だけ先公ぶりやがって。
次の瞬間俺は、その手紙を握り締めたまま家から飛び出していた。
「おや心一、頼まれていた酒はどうしたんじゃ?」
急いでババチャリに股がった途端に婆ちゃんがそう話しかけてきたが、俺は何も言わなかった。
今喋ったら、声が震えてるのが婆ちゃんにバレちまうから………。
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