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「……なぁ夏、お前この村に残れば?」
押し黙っている夏を見ていた俺は、無意識でそう切り出していた。
「はっ?」
「いやっ、ほらさ!別に教師以外にも仕事はあるし、転職してこの村で暮らせば…」
「馬鹿言ってんじゃないわよ!!」
話の途中で、何故か突然夏にそう怒鳴られた。
「いきなり怒鳴んなよ!何だよ?まだ酔っ払ってんのか?」
「酔いなんかとっくに覚めてるわよ!」
「じゃあ何で怒るんだよ?この村が好きなんだろ?転職して残ればいいじゃん?」
俺が困った顔でそう言うと、夏は俺を睨みつけてきた。
「ふざけた事言わないでよ!確かに私はこの村が好きだし、アンタ達とも一緒にいたいわよ!でもね、教師は私の昔からの夢なの!そんな簡単に手放せるもんじゃないのよこの馬鹿!!」
夏は言いたい事を全部ぶちまけると、『ハァハァ』と肩で息をした。
「夏……その、アレだ……あの……」
俺が自分の軽々しい発言を悔いて何と言ったらいいのか迷っていると、なんといきなり夏が俺の胸に抱きついてきた。
「なはぁ!?ちょっ!何だよオイ……」
俺はそこまで言った時点で喋るのを止めた。
何故なら、夏は俺の胸に顔を埋めて泣いていたからだ………。
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