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「いい心ちゃん?私が後ろから押して上げるから、心ちゃんは無理して漕いじゃ駄目だよ?」
「わかったよ」
そう言って俺はハンドルを握って、体勢を整えた。
すると、
「ワンワン!」
ナナがそう鳴いて、俺の横に駆け寄ってきた。
「何だナナ?お前も手伝ってくれんのか?」
俺がナナにそう尋ねると、ナナが頷いたように見えた。
「じゃあ頼むぜナナ。いつもみたいに俺を引っ張ってくれよ」
そう言って俺は、ハンドルにナナを繋いだ紐を結びつけた。
「それじゃあいくよ心ちゃん!無茶はしないでね?」
「わかってるよ。それじゃあ頼むぜ雨音、ナナ、それに婆ちゃん」
「馬鹿孫が。好きにしんしゃい」
そうして俺は、再び坂道をスタートした。
坂道にナナの引っ張りがプラスされた上に後ろから雨音が押してくれているので、俺が漕がなくてもペダルは回ってどんどんスピードが上がっていく。
その時、
「いてっ!」
後ろから押してくれていた雨音が転んでしまった。
「だっ!大丈夫か雨音!?」
そう言って俺はブレーキに指を掛けた。
だが、
「私は大丈夫だから、止まらず走って心ちゃん!」
デコを擦りながら涙目で雨音にそう言われて、俺はブレーキから指を放した。
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