サヨナラなっちゃん

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その後も坂道とナナのお陰でババチャリはどんどんスピードを上げていった。 そして、遂にはスピードが上がり過ぎてナナがババチャリに遅れ始めてきた。 「サンキューナナ!もういいから!」 俺はそう言ってハンドルに結んでいたナナの紐をほどいて、ナナを逃がした。 「さぁ、行くぜ婆ちゃん」 「やるだけやってみぃ」 婆ちゃんにそう言われて、俺は再度目を閉じて願いに意識を集中させた。 だが、足の痛みで中々集中できねぇ。 「はよせんか心一!スピードが落ちてきておるぞ!」 婆ちゃんにそう怒鳴られて目を開けると、坂道が終わりに近づいて緩くなっていた為に、ババチャリが減速し始めていた。 これで駄目だったら、体力的に多分もう1回は無理だ。 ………コンチクショウが!! 決意をした俺は、ペダルに足を置いて思いっきり漕ぎ始めた。 その瞬間、和らいでいた激痛が再び俺の左足首を襲った。 「ぐうっ………!」 「よさんか心一!このままでは無理じゃよ!」 「うっせぇババア!願いに集中してろ!」 俺は婆ちゃんにそう暴言を吐いて、痛みを堪えながら願い始めた。 ………お願いします。夏をこの村に教師として残してください。 他から見た感じじゃあ暴力的で、教師の権力振り回して、アイドル好きで、その上酒癖の悪い駄目教師です。 だけど近くにいる俺らから見たら、人にバレないように気を使ってて、泣きたい時も涙を隠して、素直じゃないけど優しくて、すっ、少しだけ可愛い所もあったりします。 俺にも雨音にも官九郎にも、まだ夏が必要なんです。教師としても、友達としても………。 ………だから、お願いします……神様………。
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