サヨナラなっちゃん

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「そっ、そういやお前昨日の夜、酔っ払って『村に残りたいよ~』って泣いてたよなぁ?」 怪我を馬鹿にされた仕返しに、俺はニヤニヤしながら夏にそう言い返してやった。 「はぁ?わっ、私がそんな事する訳ないじゃないの?」 「記憶がないって誤魔化しても駄目だぜ?俺にすがり付いてわんわん泣いちゃて、そりゃあもう困ったぜぇ。ハハハ!」 夏が動揺していたので、そう言って更におちょくってやった。 散々心配かけた報いだ。ざまぁ見ろだ! 「………退学よ!」 「何で!?」 そのいつも通りのやり取りに、雨音と官九郎は声を上げて笑った。 「……全く。ほら、退学が嫌ならさっさと席に着きなさい」 「クソッ、権力振り回す体罰教師め……」 俺はボソリとそう呟いて、いつもの自分の席に着いた。 あんな教師の為にこんな怪我をしたなんて………俺の左足が泣いてるぜ。 《ゴメンね心一、本当は全部覚えてるんだ。でも私、アンタに似て素直じゃないからさ》 夏は心の中でそう謝ると、心一達に見えないようにポケットの中から3枚の封筒を取り出した。 そう。これは心一達宛に書いた別れの手紙だ。 夏はその3枚の封筒をクシャクシャに丸めると、教室の隅のゴミ箱の中へと放り投げた。 「さてと、それじゃあ授業始めるわよ」 改めて心一達の方に目線を戻した夏は、とびきりの笑顔でそう言った。
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