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「あっ、スマンのぅ村長!ハハハ!」
村長の元に歩み寄った官九郎は、そう言って適当に謝った。
どうやらさっきのタコは、官九郎が釣り上げた勢いで村長にクリーンヒットしたらしい。
偶然でもナイスだ官九郎!
「俺、何かマズイ事したかのぅなっちゃん?」
「いや、むしろよくやったわ官九郎!」
今更自分がピンチであった事を知った夏は、そう言って官九郎と握手を交わした。
一方で雨音は、タコが顔面に張り付いているせいで呼吸困難に陥ってもがいている村長をナナと一緒につついて楽しんでいる。
……ふぅ。なんつーか、慌ただしいけど平和だな。このままずっとこっちで暮らすのも、悪くねぇかも知れねぇな……。
俺はそんな事を思いながら、未だに日射しの強い終わりかけの夏の空を見上げた。
楽しい時間程早く過ぎるとはよく言うが、まさにその通りだ。
時間はもう夕方。夏の終わりの海にはオレンジ色の綺麗な夕日が半分沈み、海も空も雲も全てをオレンジ色に染めていた。
「綺麗だね心ちゃん♪」
「そうだな」
俺はそう答えながら、横目で雨音を見た。
……やっぱり雨音は可愛い。改めてそう思う。
目の前にいるコイツは、誰にでも優しくて、馬鹿みたいに明るくて、少し変わってて、笑顔がスゲー暖かい。
そんで、ずっと『女なんてめんどくせぇ』って思ってた俺が、初めて好きになった女………。
瞳をオレンジに染めながら夕日を見ている雨音を見ていると、何故か急に胸が苦しくなった。
これが恋の苦しみってヤツか?柄じゃねぇな………でも、悪かねぇ。
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