愛しい人

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ジリリリリ!…… ジリリリリ!…… 蒸し暑くて寝苦しい深夜に、黒電話の音が鳴り響いた。 時計を見ると深夜の1時。つまり今はもう8月の最後の31日という訳か………。 「つーか誰だよこんな夜中に……」 俺が目を擦りながらそう言った時、ちょうど電話の音は止まった。親父かお袋が電話に出たんだろう。 でもすっかり目が覚めちまった。この蒸し暑い夜に起こされて、もう一度寝るというのは結構至難の技だ。 「心一!心一起きなさい!!心一!!!」 もう一度眠ろうと試みていると、お袋が俺を呼ぶ声が聞こえてきた。 何でそんなに大声で呼ぶんだよ? 「何だよお袋?こんな真夜中に?」 「アンタ寝てる場合じゃないわよ!落ち着いて聞きなさいよ……」 ……何を焦ってんだお袋は? 「……雨音ちゃんか自宅で倒れて、病院に運ばれたそうよ」 「………は?」 俺の思考は、それから少しの間停止した。 ……雨音が倒れた? なんで?夕方まで一緒に海で楽しく遊んでたじゃねーかよ? 階段から落ちたとかか? それとも病気か何かか? 「……お袋、雨音が運ばれた病院って村長の弟さんの病院か?」 「えぇ……」 お袋の答えを聞いた瞬間、俺は走り出していた。
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