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………えっ?
……叶えられない?
「……何でだよ婆ちゃん!?俺心の底から願うし、死ぬ気でペダル漕ぐから!だから!」
「お主の頑張りの問題ではないんじゃよ。単純にアタシの『神様』としての力の問題なんじゃ」
婆ちゃんはそう説明したが、いまいち俺には意味がわからない。
「雨音ちゃんの産みの親の神様が雨音ちゃんを助けた時に言ったじゃろ?『命を助けるのは神様の禁止行為』じゃと。アタシが雨音ちゃんの病気を治す事は、すなわち命を助ける事に繋がる。だから助けられぬのじゃ」
「禁止行為なんて関係ねぇよ!婆ちゃんはそこらの神様よりスゲェ神様なんだろ!?頼むから雨音を助けてやってくれよ!助けるって約束したんだよ!」
俺は大声で婆ちゃんに頼んだが、婆ちゃんは静かに首を横に振った。
「……残念ながらアタシの力は雨音ちゃんの産みの親の神様より弱いのじゃ。神様の禁止事項を破る程の力を持っている神様など、それこそ片手で数えられるくらいしかおらぬのじゃ」
申し訳なさそうにそういう婆ちゃんに、俺はそれ以上言う言葉が見つからなかった。
……結局俺は何も出来ないのか?
……初めて好きになった人が死んじまうってのに、黙って見てる事しか出来ないのか?
「………俺は漕ぐからな」
答えの見つからなかった俺は、そう言ってババチャリを漕ぎ始めた。
情けないが、そうする事しか思いつかなかったんだ。
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