愛しい人

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結局俺は朝飯も食わないまま家を出て、ババチャリで学校へと向かった。 深夜から寝ずにチャリを漕ぎ続けていたにも関わらず、俺はそれほど疲れも感じていなかったし、あまり腹も減っていなかった。 多分、雨音の事で頭が一杯で他の事が頭に入らないからだろう。 家を出てから案外早く学校へと着いた。 色々と考え事をしていたから、早く着いたと思っただけかも知れないが……。 俺はババチャリを停めて校舎に入り、腐ってギシギシと軋む木製の階段を駆け上がって急いで教室の扉を開いた。 次の瞬間、 「遅刻よ心一!!」 その声と共に、黒板消しが俺に向かって勢いよく飛んできた。 いつもならまともにくらう所だが、俺はその黒板消しを目の前でキャッチして教室内へと入った。 「アンタ何普通に取ってんのよ。空気読みなさいよね」 「それどころじゃねーんだよ!雨音が………って、雨音!?」 声を張り上げてそう言った俺の目線の先には、車椅子に座って教室内にいる雨音の姿があった。 「やっほー心ちゃん♪」 「『やっほー』じゃねーよ!病院にいなくていいのかよ!?」 「え~、だって病院暇なんだも~ん」 そう言って雨音は、ふてくされたように頬を膨らませた。
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