愛しい人

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「いくら暇だからってお前…フガホガ」 俺が雨音に注意しようとした時、俺は夏の手で口を塞がれてしまった。 「……ぶはぁ!何すんだよ夏!?」 「シーッ!いいから黙って聞きなさい心一」 夏にヒソヒソ声でそう言われて、俺と夏は教卓の裏に隠れるようにしゃがみこんだ。 「雨音の事なら私と官九郎も、雨音のお母さんから聞いたわ」 「だったら病院に戻すべきだろーが!」 俺が小さく怒鳴るようにそう言うと、夏は悲しそうな顔をして溜め息をついた。 「いい心一?もしアンタが今日一杯までしか生きられないとしたら、ずっと病院に閉じ込められたい?」 「………確かに、それは嫌だな……」 俺は納得してそう呟いた。 「寛七先生の話だと、病気の進行は抑えられないそうよ。それなら病院にいるより雨音の好きなようにさせてやりたいと思って学校に連れてきたの」 「そうか………」 俺は呟くようにそう言って、顔を伏せた。 雨音の死は止められない。 わかってはいたけど、改めて言われると抑えきれない感情が沸き上がってくる……。 「そんな顔すんじゃないわよ心一。雨音はアンタのそんな顔なんか見たくないはずよ。男なら強くなりなさい」 「……うるせぇ。わかってるよ………!」 そう言って俺は立ち上がって、隠れていた教卓から顔を出した。 目線のを官九郎に向けると、官九郎は何も言わずにコクリと頷いた。 それだけで、官九郎も決意しているという事が伝わってきた。
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