愛しい人

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「……ほら、アンタも席に着きなさい」 「……あぁ」 俺はそう返事をして、大人しく席に着いた。 隣にいる雨音は、いつもと変わらずニコニコと笑っていた。 本当に雨音は強いな………。 「さぁーて!雨音!今日1日何するか、アンタが決めなさい!」 夏は大声でそう言って、雨音をビシッと指差した。 「えっ!私が決めていいの!?」 「今日は特別よ。ほら、決めなさい」 夏が優しい声でそう言うと、雨音は顎の辺りに手を添えて真剣に考え始めた。 「雨音!釣りじゃ釣り!是非釣りを…フガホガ!」 「黙ってろ官九郎」 そう言って俺は官九郎の口を封じた。 「う~ん……………よしっ!決めた♪」 しばらくして、雨音はそう言って手を上げた。 「何だ?言ってみろよ雨音」 「私ね、皆でお散歩がしたい♪」 雨音の口から出てきたのは、予想外に普通な提案だった。 「散歩?そんなんでいいの?」 「うん♪私お散歩好きだから♪」 そう言って雨音は無邪気に微笑んだ。 「まぁ、雨音がそうしたいならいいわ!早速出発よ心一!官九郎!」 「うぃーっす」 「了解じゃ!」 そう言って俺と官九郎は立ち上がり、官九郎と協力してもう歩けない雨音を車椅子ごと持ち上げてオンボロの階段を降りた。
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