愛しい人

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雨が降ってきてしまったという訳で、俺達は嫌がる雨音を説得して学校へと戻ってきた。 望み通り1日中散歩させてやりたかったが、一応病人なのだから風邪でも引かれたら困るからな。 今現在、勢いよく降りだした雨のせいでアチコチで雨漏りしている教室で、雨音は外を眺めていた。 「う~ん……雨音を楽しませる方法はないかのぅ?」 「俺も今考えてんだよ」 俺と官九郎は、こそこそとそう会話をして雨音を楽しませる方法を模索した。 すると、 「ねぇ、トランプ見つけたけど……」 室内で遊べる物を探していた夏が、トランプを手に持って教室に入ってきた。 「おーい雨音!トランプやろーぜ!」 「……うん♪」 そう言って微笑んだ雨音の顔は、やっぱりまだ散歩の事が心残りなように見えた。 「う~ん………こっち♪」 「ぬあぁぁぁ!また負けかよぉぉぉ!!」 俺、只今ババ抜き5連敗中。 「心一弱すぎよ」 「本当に駄目駄目じゃのぅ」 「うるせぇよ!もう1回だ!」 そう言って、俺はトランプをかき集めてシャッフルした。
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