愛しい人

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ガラガラガラッ 突如、教室の腐った木製の引戸が開かれた。 開かれた引戸の向こうには、雨音のお袋の姿があった。 「皆さん、ありがとうございました」 教室に入ってくるなり、雨音のお袋はそう言って丁重に頭を下げた。 それにつられて俺と夏と官九郎もペコリと頭を下げた。 「さぁ雨音、診察の時間よ」 「……わかった」 雨音は残念そうにそう言うと、車椅子の車輪を回しながら雨音のお袋の元へと向かっていった。 そうか。もう病院に戻らなきゃいけない時間なのか………。 ふと見た腕時計は、午後の4時を示していた。 「雨音、今晩何食べたい?何でも作って上げるから」 「本当?じゃあハンバーグと、お刺身と、カレーライス♪」 はしゃぎながらそう言う雨音を、雨音のお袋はとても悲しそうな顔で微笑みながら見守っていた。 何処から見たって血の繋がっている親子のように見える。 血が繋がっていないって事の方が嘘みたいだな……。 「ほら、行くわよ心一」 「何ボーッとしとるんじゃ?」 「わっ、わりぃわりぃ!今行く!」 そう言って俺は歩き出し、雨音達と一緒に病院へと向かった。
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