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「あっ、あのよぉ雨音………俺、お前に謝らなくちゃならない事があるんだ……」
「へっ?」
雨音はよくわからないといった顔で俺を見た。
「その………俺さ、約束したろ?でも、どうしても無理だったんだ。俺のただの早とちりで………」
「……何の話?」
雨音の返答は、意外な言葉だった。
「いやっ、ほらっ!だからババチャリで治してやるって約束を……」
「治してやるって何を?」
「それは………」
ここまできて、ようやく俺は気づいた。
雨音は、俺との『約束』も忘れてるんだ……。
「……心ちゃん?」
「……いや、何でもないんだ。俺の勘違いだ。気にしなくていいから……………ゴメン」
俺はそう言って、相変わらず寝癖のついてる雨音の頭に手を置いた。
最後にボソリと呟いた『ゴメン』の言葉の意味に、雨音は気づく事はないんだろうな……。
「……心ちゃん、何か私眠たくなっちゃった。少しだけ眠っていいかな?」
「あぁ、安心して眠っていいぞ。ここにいてやるから」
そう言って、俺は雨音の手を両手で包み込んだ。
これが、今の俺にできる約束を守れなかった事に対する精一杯の償い……。
雨音は安心したのか、すぐに夢の中へと落ちていった。
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