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………いいのか?
………こんなんでいいのかよ?
本当に俺には、手を握るくらいしかできねぇのかよ………。
……もう一度婆ちゃんに聞いてみよう。本当に何をしても駄目なのか。
往生際が悪いかも知れないけど、このまま黙って見守るなんて俺には耐えられない……。
俺はそっと雨音の手を離して、病室から出た。
学校にババチャリを取りに行く為に。
心一のいなくなった病室で、雨音はゆっくりと目を開けた。
微かに心一の温もりの残る手を見つめて、その手を大切そうに胸に当てた。
《ゴメンね心ちゃん。本当は『約束』覚えてたんだ私。私の病気を治すのは無理だって事は、最初からわかってたの。でもね、心ちゃんならもしかしたら本当に病気を治してくれるかもって思っちゃって………》
病室で1人心の中で心一に謝る雨音は、布団を頭まで被って密かに涙を流した。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
病院を出てから数十分。俺はようやくババチャリを置いてきた学校に到着した。
俺は息を整えてからババチャリに歩み寄り、ハンドルを掴んだ。
ハンドルを掴んだ途端に、ババチャリのベルの上に婆ちゃんの姿が現れた。
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