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「心一よ、ハッキリと言ってしまえば、できる事など何もない。じゃがの、死んだって終わりではない。アタシのように神様になれるんじゃよ。とはいえ、心一には見る事も触れる事もできないがの」
婆ちゃんのその言葉に、俺はズキンと心が傷んだ。
「心一よ、アタシに触れてみぃ」
「…へっ?」
「いいからはよ触れてみぃ!」
「わっ、わかったよ」
俺は言われるがままに、ベルの上にいる小さい婆ちゃんの頭に手を置いた。
だが、感触は全くなく、空気のようにしか感じる事ができない。
「……当然じゃが、死ぬと人は霊体のみになる。故に暖かいとか冷たいとか、そういったものも感じられなくなるんじゃよ。勿論、人の温もりも……」
婆ちゃんは、随分と悲しそうにそう言った。
「じゃから、雨音ちゃんの手を握っててやれ。神様になってもずっとずっと人の温もりを忘れないでいられるくらい、握り続けてやるんじゃよ。それが、今の心一にできる事じゃよ」
婆ちゃんのその言葉を聞いた俺は、少し心のモヤモヤが晴れたような気がした。
「……サンキューな婆ちゃん。俺、最後まで雨音の手を離さねぇから」
「あぁ。頑張るんじゃぞ」
俺は婆ちゃんに笑顔で答え、ババチャリから手を離した。
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