愛しい人

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ガチャ 俺が病室の扉を開けると、病室内には夏、官九郎、雨音のお袋、寛七先生と全員が集合していた。 そして、何故だか空気がヤケに重い……。 「……一体何をしとったんじゃ心一ぃ……」 不意に、官九郎が掠れるような声でそう言った。 「わりぃ。その……色々とあって……」 「色々?馬鹿!!アンタがその色々をしてる間に……雨音が………」 ………雨音が? 雨音がどうしたんだ? ………まさか!! 最悪の事態が頭を過った俺は、夏達を掻き分けて雨音のベッドの前に出た。 すると、そこには普通にベッドの上に座っている雨音の姿があった。 ……んだよ。何ともないじゃねえかよ……ったく。 「………誰?」 不意に、雨音の声が俺の耳に入った。 雨音の虚ろな目は、俺を捉えている。 ………俺に聞いてるのか? 「………雨音?俺に聞いてるのか?」 そう尋ねると、雨音は僅かにコクリと頷いた。 ………忘れたのか? この時が来るのをずっと恐れてた。 でもそんな………俺がいない間に…………そんな……… …………俺の事、忘れちまったのかよ………。
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