愛しい人

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その後すぐ俺は雨音の乗った車椅子を押して外に出て、ババチャリの前まできた。 「……自転車で行くのかの?」 「あぁ。落ちないように雨音と俺を紐が何かで結んでくれるか?」 俺がそう頼むと、夏達は俺と荷台に乗った雨音の体を紐でしっかりと結んでくれた。 「本当に大丈夫なの心一?」 「大丈夫だ。多分今から驚く事が起こると思うけど、心配しなくていいし後でちゃんと説明するから」 そう言い残して、俺はババチャリを漕ぎ始めた。 「婆ちゃん、雨音に神愛樹を見せてやりに行きたいんだ。それぐらい叶えてくれるだろ?」 「勿論じゃよ!しっかり漕ぐんじゃぞ心一!」 ベルの上の婆ちゃんにそう言われて、俺はババチャリを力強く漕ぎ、願い始めた。 ………雨音を神愛樹の所に行かせてくれ。 雨音の最後の願い、叶えてやりてぇんだ。 小さな事だけど、喜んでもらいてぇんだ………。 ………お願いします神様。 そう願った次の瞬間、ババチャリが輝き出して俺と雨音の体を光で包み込んだ。 その眩い輝きで、離れて見ていた夏達は思わず目を覆った。 そして次に目を開けた時、もうそこには心一と雨音の姿はなかった。 「……何だったんじゃあの光は?」 「心一が後で教えてくれるわよ」 夏は何処か遠くを見ながらそう言った。 「2人共、ちゃんと神愛樹の所に行けたのかしらね……」 「……きっと行けましたとも」 心配する雨音の母親に、寛七先生は優しい口調でそう言った。
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