愛しい人

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「ふざけんな!俺はお前に守られたくなんかねぇ!俺が……俺がお前を守りてぇんだよ!!」 急に怒鳴った俺に驚いて、雨音はキョトンとしている。 「何でそんなに強いんだよお前は!もうすぐ死ぬんだぞ!怖くねーのかよ!?」 「……少し怖いよ」 「……なら泣いてもいいんだよ雨音!隠さなくてもいいんだよ!俺なんて………俺なんてこの村に来てから泣いてばっかなんだぞ………」 そう言った俺は、また涙を流していた……。 また泣いてるよ俺……駄目だなぁ………。 「………ありがとう心ちゃん」 そう言って雨音は、俺に寄り添ってきた。 「我慢してたんじゃないよ?本当に涙が出ないの。私はずっと神様を見て生きてきたから、死後の生き方を知ってるからそんなに怖くなかったの。………でも、もう心ちゃんとこうしていられないと思うと、悲しくなってきちゃったな……えへへっ♪」 そう言って微笑んだ雨音の目からは、一筋の涙が溢れていた。 ……雨音の涙を初めて見た。 コイツは、泣く時も笑うんだな………。
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