君への翼

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今日から9月だというのに、相変わらずこの村はクソ暑い。 俺はずっと部屋から窓の外を眺めている。 今日の天気は雨。 いつもなら気が滅入るが、今日は不思議と落ち着くな……。 コンコンッ 「心一。準備できた?」 不意に部屋の扉がノックされて、お袋の声が聞こえてきた。 「……入るわよ」 そう言って部屋に入ってきたお袋は、黒い喪服に身を包んでいた。 ふと時計を見ると午後の5時。 そっか……雨音の通夜があるんだっけ………。 「……行かねー」 「行かないってアンタ………最後なのよ?」 「……行かねー」 「……先に行ってるわよ」 そう言ってお袋は部屋を出ていった。 再び俺が窓の外を眺めていると、黒い傘をさした親父とお袋が雨音の家の方へと歩いていった。 ……静かな部屋で、雨の音だけが俺の耳に聞こえてきた。 雨の音なんてこんなに静かな所で聞いた事なかったけど、こんなにいい音だったんだな。 スゲー心が落ち着く………。 ………今考えたら、『雨の音』って書いて雨音(アマネ)って読むんだよな。 今思えば、スゲーいい名前だな………。
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