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ただひたすらに全力でペダルを漕ぎ、大量の雨粒が俺の顔を濡らした。
そのせいで、自分が泣いてるのかよくわからない。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!あぁぁぁぁぁ!!!」
俺は訳もわからず声を上げた。喉が潰れる程叫びながらペダルを漕ぎ続けた。
自分でも訳がわからない。
………世界が少しずつ崩れていっているような気さえした。
「ハァ……ハァ……」
……どのくらい走っただろうか?
灰色の曇り空が真っ黒になった頃、俺はようやく力尽きてババチャリを止めた。
雨はより一層強みを増し、既にずぶ濡れの俺の体に容赦なく降り注いだ。
……そういや俺、通夜に行くつもりだったんだっけ?
もうとっくの昔に始まってんだろうな………まぁ、どうでもいいや……どうせ雨音はもういないんだし………。
「……心一よ、辛いかぇ?」
不意に、婆ちゃんがそう尋ねてきた。
「……当たり前だろ」
「では聞くが、何故辛いのかぇ?」
「何故かって?死んだからに決まってんだろ!」
「……アタシが死んだ時は、そんなに苦しまなかったじゃろ?」
婆ちゃんにそう言われて、俺はハッとなった。
………婆ちゃんには悪いが、その通りだ。
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