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「まぁそれは当然じゃよ。なんせ小さい時に一度会っただけじゃからのぅ、あの頃の心一にとっては他人も同然じゃろうて」
俺は婆ちゃんのその言葉に、何も言葉を返せなかった。
「……では心一よ、雨音ちゃんが死んで何故悲しいんじゃ?」
「それは!………雨音が俺の友達だから………」
「………それだけではなかろう」
そう言われた時、俺の中で何かが弾けた。
「………好きだったんだよ。人生で初めて好きになった相手だったんだよ雨音は!変わってて気分屋で、頭は寝癖だらけで色気は0だけど、俺が知ってる誰よりも優しくて、強くて、可愛くて、一緒にいて楽しくて、そして………誰よりも好きだった」
………そう。俺は雨音が好きだった。
伝えられなかったから、『好き』が『好きだった』になってしまった……。
……もうこの想いは伝えられない。
雨音は死ぬ間際、俺になんて伝えようとしたんだろうか………。
……自意識過剰かも知れないけど、同じ想いを伝えようとしてくれてたんだと思う。
でももう、永遠にわからない……。
「……馬鹿だなぁ俺。何でちゃんと『好きだ』って伝えなかったんだろ………雨音は苦しいのを我慢して伝えようとしてくれてたのに……」
声が震えてるのが、自分でもよくわかった。
大量の涙と鼻水が溢れてきたが、全て雨が洗い流してくれた。
……今日が雨でよかった。
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