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「相変わらず硬いわねぇ白」
突然、何の前触れもなく女性の声が聞こえてきた。
俺がその声のした方に目線を移すと、そこには真っ白な空間に嫌でも目立つ真っ黒な姿をした誰かが立っていた。
声の主は、4本の足で真っ白な床を踏みしめながら俺の方へと歩みよってきた。
真っ黒な体に、首には黄色い首輪………俺はコイツをよく知っている。
「……なっ、ナナ!?」
そう。そこにいたのは紛れもなく俺ん家で飼っている黒いラブラドールレトリバーのナナだった。
「何でここに!?まさか死んじまったのか!?てか今喋ってなかったか!?」
「まぁまぁ落ち着きなさいよ心一」
「うわっ!喋ったぁ!!」
俺はそう叫んで、尻餅をついてしまった。
「まったく、情けない主人ねぇ」
ナナはそう言って、軽く溜め息をついた。
「くっ、黒神様(クロガミサマ)!まさかナナが黒神様だったとは……!」
「気づかなかったでしょ?アハハ!」
驚く婆ちゃんを他所に、そう言って黒神様と呼ばれたナナは楽しそうに笑った。
………何がどうなってんだ?
「……おい、説明してくれよ婆ちゃん」
「うっ、うむ。この黒い犬の姿のお方は黒神様と言って、白神様と並ぶ最高位の神様なんじゃよ。黒神様は姿を自由に変える事ができての、どうやら野良犬の“ナナ”として、ずっと家にいたらしいんじゃよ」
えーっと………つまり、俺はずっと最高位の神様を飼ってたのか?
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