ババチャリ

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「まず心一、お前はアタシが言った神様の話を覚えてるかぇ?」 「あぁ。『どんなものにも神様が宿っている』とかそんな感じのだろ?」 俺は幼い頃の記憶をたどりながらそう言った。 「まさにそれじゃよ。つまりアタシは、このママチャリに宿った『神様』って訳じゃ!」 婆ちゃんにそう言われて、俺は夕方の神愛樹での出来事を思い出した。 神愛樹には、婆ちゃんの言葉通り虫や鳥の『神様』が宿っていた。 つまりこのママチャリも神愛樹と同様に、婆ちゃんが『神様』として宿っている訳か。 「なんじゃ心一?信じられんのかぇ?」 「いやっ、信じるよ。夕方に樹に宿る神様見たし。てかさぁ、生き物は死んだら神様になんのか?」 俺は婆ちゃんにそう尋ねてみた。 「別に全てが神様になる訳ではない。生前に強い思い出を残した物があれば、その物に宿ってその物の神様になる事が出来るのじゃ。ちなみに人間に宿った神様の事を、一般的に『守護霊』と言うんじゃよ」 「なるほど…」 俺はそう納得しながら、ママチャリを漕ぎ続けた。 「勿論神様にならずに成仏する事も出来るし、怨みがある者はこの世に永遠に留まる『悪霊』になる事も出来るのじゃよ」 「なるほどなぁ。死んでからも色々あるんだな」 そう言って俺は、思わず感心してしまった。
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