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「お世話になりました白神様」
俺はそう言って、白神様に頭を下げた。
俺は今ババチャリに股がりペダルに足を掛けている。
そして、ベルの上には元の小さいサイズに戻った婆ちゃんが座っていて、後ろの荷台には俺の神様となった雨音が座っていた。
「小僧……いや、心一といったな。貴様のような奴は初めてだった。中々面白かったぞ」
白神様は笑わずにそう言った。
……つか、面白かったのか?
「心一、雨音、私とはここでお別れだよ。元気でね」
そう言って少女の姿のナナが俺と雨音に向かって手を振った。
「あぁ、今までありがとなナナ!」
「楽しかったよナナちゃん!じゃあね♪」
そう言って俺達もナナに手を振った。
「……では、行くとするかのぅ心一」
「あぁ。そうだな」
婆ちゃんにそう答えて、俺はゆっくりとババチャリを漕ぎ始めた。
ババチャリは少し先に見える天国の門に向けて、少しずつ進んでいく。
……後ろに乗っている全く重みを感じない雨音は、天国から出ると同時におそらく見えなくなるだろう。
………あっ。そういや俺、一番伝えたかった事伝えてねぇや。
「なぁ雨音?」
俺は前を向いたまま、雨音に話しかけた。
「なぁに心ちゃん?」
雨音がそう答えた時、ババチャリは既に天国の門に前輪が入りかけていた。
「………俺さ、お前の事好きだから」
そう言ったのとほぼ同時に、俺は天国の門を抜けて真っ暗な夜空へと飛び出した。
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