ババチャリ

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「…つー訳で、俺は何処かもわからねード田舎に引っ越す事になっちまったんだよ」 俺は祥に一通りの説明をして、出された麦茶を飲みほした。 「なるほど。大変だったんだな……殴って悪かったな」 「気にすんな。お前のパンチなんて全然効いちゃいないからよ」 俺がそう言うと、祥はやっといつもの笑顔に戻った。 「お前明日帰るんだろ?じゃあ今夜は寝かさねーからな!」 「上等だ!今の言葉、後悔させてやるよ!」 そうして俺らは、空が明るみを帯びて来るまで語り尽くした………。 「あちぃ」 俺が目覚めて始めに発した言葉はそれだった。 7月に入ったとはいえ、いくらなんでも暑すぎるだろ。 時計を見ると、もう昼の1時。 そして横には、祥が中学の時の卒業アルバムを手にしたまま死んだように眠っている。 《そうか、俺祥の家にいたんだっけ……》 俺はそう思い出して、窓の外を見ながら昨日の事を思い出した。 《俺、本当にあの婆ちゃんの宿ったチャリで東京まで帰ってきたんだよな………》 窓の外には、その証拠だと言わんばかりにボロい赤色のママチャリが置いてある。 《てか、そろそろ帰らなきゃな。親父やお袋も心配してるかも知んねーし……》 そう思って俺は祥を起こそうとしたが、あまりにもぐっすりと寝てるから止めておいた。 「世話になったな祥。お前との今までの学校生活、悪くなかったぜ。またいつか会おうな」 俺は面と向かっては言えないような恥ずい台詞を祥に呟いて、部屋を後にした。 「フン、最後の最後に素直になりやがったな心一のヤツ………またな」 祥は出て行った心一にそう呟いて、再び眠りに落ちていった。
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