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「あのなぁ、東京に住んでるからって簡単に会える訳ねぇだろ」
俺が呆れ顔でそう言うと、先公は溜め息をして『つまんないの』と呟いた。
「さぁーて、それじゃあ今度はアンタ達の自己紹介よ!雨音から始め!」
「はいはーい♪」
先公に指名されると、海野は元気よく返事をして立ち上がった。
「え~っと、海野雨音です!特技は神様が見える事です!よろしくね心ちゃん♪」
そう言って海野は俺に微笑みかけてきた。
「俺は山岡官九郎(ヤマオカカンクロウ)じゃ!3度のメシより釣りが好き!俺に釣れないもんはないのじゃ!」
麦わら野郎こと山岡は、ジジ臭い言葉使いでそう自己紹介をすると、右手の釣竿を自慢気に高々と掲げた。
なんかウゼェ奴だな。
「そんで私は担任の榎本夏(エノモトナツ)よ。さっきも言ったけどこの高校の教師は私だけだから、留年も退学も私次第な訳。その事を肝に銘じておきなさいよ心一」
そう言って先公は俺を指差してきた。
つまりあのドS教師には逆らえねぇって訳か。
てかいきなり呼び捨てかよ………まぁいいけど。
「さてと、そんじゃあそろそろ午後の授業始めるわよ!」
先公のその言葉を聞いて俺はハッとした。
《俺、教科書なんて持ってねぇ………》
当然といえば当然だが、俺は教科書を持ってきていなかった。
つーか、教科書買う金なんてないし。
「先公…じゃなくて榎本先生、俺教科書とかないんですけど」
俺は先公の脅しの言葉を思い出して、咄嗟に敬語に切り替えてそう言った。
すると、
「あぁ、大丈夫よ。授業は体育だから」
先公は長いポニーテールを体育の邪魔にならないようにコンパクトに結び直しながらそう言った。
言われてみれば、先公も海野も山岡もジャージ姿をしている。
でも俺、体操着なんて持ってきてねぇぞ?
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