幼い神様

9/16

18310人が本棚に入れています
本棚に追加
/246ページ
《あのクソババア、海野にバラしやがったな!》 俺は心の中でそう悪態をついて、ババチャリを睨んだ。 ババチャリに触れてないから婆ちゃんの姿は見えないけど、多分ニヤニヤ笑ってやがるんだろうな。 「ねぇ?どうなの心ちゃん?」 「うっ……」 真っ直ぐな瞳で俺に問いかけてくる海野に、俺は思わず2、3歩後退った。 だが、ここで誤魔化してもいつまでも誤魔化せる事じゃない。 俺は皆に嘘をついたんだ。 海野の本気で唯菜を助けたいって気持ちを踏みにじったんだ………。 アレ?ちょっと待てよ………。 ふとここで頭に疑問が浮かび上がった俺は、海野の隣をすり抜けてババチャリの元に駆け寄った。 「なぁ婆ちゃん!海野がチャリを漕げば海野の願いを叶える事も出来んのか!?」 「海野ってのはあの女の子の事かぇ?アタシの姿が見えるなんて不思議な子じゃねぇ。ヒャッヒャッヒャッ!」 「笑ってねぇで答えてくれよ!!」 俺はそう言って、気持ち悪く笑う婆ちゃんに怒鳴った。 「正直アタシが願いを叶えられるのは血の繋がりがある者だけじゃ。じゃがお主が一緒に乗って自転車を漕ぐなら、ひょっとしたら出来るかも知れんのぅ」 「本当か!?じゃあ頼むよ!!」 俺はそう言ってババチャリから手を離すと、訳がわからず呆然としている海野の横を走って通り過ぎて、人形を取ってくるために家の中に入った。
/246ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18310人が本棚に入れています
本棚に追加