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《あのクソババア、海野にバラしやがったな!》
俺は心の中でそう悪態をついて、ババチャリを睨んだ。
ババチャリに触れてないから婆ちゃんの姿は見えないけど、多分ニヤニヤ笑ってやがるんだろうな。
「ねぇ?どうなの心ちゃん?」
「うっ……」
真っ直ぐな瞳で俺に問いかけてくる海野に、俺は思わず2、3歩後退った。
だが、ここで誤魔化してもいつまでも誤魔化せる事じゃない。
俺は皆に嘘をついたんだ。
海野の本気で唯菜を助けたいって気持ちを踏みにじったんだ………。
アレ?ちょっと待てよ………。
ふとここで頭に疑問が浮かび上がった俺は、海野の隣をすり抜けてババチャリの元に駆け寄った。
「なぁ婆ちゃん!海野がチャリを漕げば海野の願いを叶える事も出来んのか!?」
「海野ってのはあの女の子の事かぇ?アタシの姿が見えるなんて不思議な子じゃねぇ。ヒャッヒャッヒャッ!」
「笑ってねぇで答えてくれよ!!」
俺はそう言って、気持ち悪く笑う婆ちゃんに怒鳴った。
「正直アタシが願いを叶えられるのは血の繋がりがある者だけじゃ。じゃがお主が一緒に乗って自転車を漕ぐなら、ひょっとしたら出来るかも知れんのぅ」
「本当か!?じゃあ頼むよ!!」
俺はそう言ってババチャリから手を離すと、訳がわからず呆然としている海野の横を走って通り過ぎて、人形を取ってくるために家の中に入った。
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