幼い神様

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俺は部屋に置いてある人形を掴み取ると、すぐさま外へと戻った。 「なぁ海野、唯菜は今どんな顔してる?」 俺は人形を海野の前に突き出して、そう尋ねた。 「………泣いてる」 《……やっぱりか》 俺は心の中でそう呟いた。 「海野、唯菜も聞いてくれ………俺は嘘をついた。この人形の家なんて知らない。ただ親探しがめんどくさいから嘘をついたんだ………」 そう白状した俺を、海野は無表情のまま見守っていた。 「でも、海野が協力してくれたらもしかしたら唯菜を親の所に帰してやれるかも知んねーんだ!」 「………どういう事?」 当然だが、海野は訳がわからないという顔をした。 俺はそんな海野にババチャリは願いを叶える事が出来る事や、海野が願って俺が漕げば唯菜を帰してやれるかも知れない事を話して聞かせた。 「……って事だ。俺じゃあ願う心が足りなかった。でも海野は俺と違って本気で唯菜の事を思ってるだろ?だから協力してくんねーか?」 「………うん♪やってみるよ♪」 俺の頼みに、海野はそう笑顔で答えてくれた。 「よっし!そんじゃあ頼むぞ婆ちゃん!」 「先に言っとくが、2人も運ぶんじゃから生半可に漕いでも無理じゃぞ。まぁ、叶えられるかもわからんがな」 「んな弱気な事言うなよ婆ちゃん。マジで頼むぜ?海野もちゃんと掴まってろよ」 「わかったぁ♪」 そう言うと海野は、何と俺の腰に手を回してきた。 「バッ!何してんだよ海野!荷台掴んでりゃいいだろーが!」 「でもこっちの方が安全だよ♪」 「そういう問題じゃなくて!!」 「ヒャッヒャッヒャッ!初々しいのぅ」 婆ちゃんは自分の青春を懐かしむようにそう言って俺をからかった。 《くそっ!もう完全にクールなキャラじゃなくなっちまったな俺………》 俺は東京にいた頃の自分を懐かしみながら、ゆっくりとババチャリを漕ぎ始めた。
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