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「誰だい君達は?今何時だと思ってるんだい?」
中から出てきた唯菜の親父と思われるオッサンは、玄関の扉から顔を出してそう言った。
「こっちはわざわざ大事な物を届けに来てやったんだよ。ほら」
そう言って俺は、唯菜の宿ってるウサギの人形をオッサンに突き付けた。
オッサンは目を丸くして人形を見て硬直している。
「感謝しろよオッサン。じゃあな」
俺はそう言って人形をオッサンに渡すと、さっさと帰ろうと思いクルリと向きを変えた。
その時、
「ふざけるなクソガキ!感謝しろだぁ?捨てたゴミをわざわざ返されて、何故感謝しなくちゃいけないんだ!!」
オッサンが近所迷惑も考えずに、大声で俺にそう怒鳴ってきた。
今コイツ、人形の事『ゴミ』っつったか?
次の瞬間、俺の中で何かが弾けた。
「もういっぺん言ってみろコラ!死んだ娘が大事にしてた物をゴミ扱いか!?ふざけてんのはどっちだよ!!」
俺はそう叫んで、オッサンの胸ぐらを掴んだ。
「……何故娘の事を知っている!?大体お前みたいなガキに、娘を失った俺達の気持ちがわかるか!!そばにこの人形置いとくと唯菜の事を思い出してしまうんだよ!辛いんだ!辛いなら忘れてしまった方がマシだろ!?違うか!?」
オッサンにそう言われた俺は、何も言い返す事が出来なかった。
騒ぎを聞いた唯菜のお袋らしきオバサンもいつの間にか玄関にやって来ていて、手で顔を覆って泣いている。
海野はオッサンに握られている人形を見て、とても辛そうな顔をしている。
多分海野に見えてる唯菜は、今泣いてるんだろうな………。
「事情はわかっただろ?さっさとこの人形持って帰ってくれ」
そう言ってオッサンは俺に人形を突き返して、玄関の扉を閉めようとした。
その時、
「唯菜ちゃん、ここにいますよ?」
ずっと黙っていた海野が口を開いて、オッサンにそう言った。
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