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「アタシは最初はその娘っ子の願いを叶えようと頑張ったんじゃが、やはり血が繋がってないと駄目みたいで無理だったんじゃ。そしたら心一が本気で願い出したから、心一の願いを叶えたんじゃよ」
そう言って婆ちゃんはお茶をズズズッとすすった。
「俺が………?俺が唯菜の事を本気で願ったのか?」
婆ちゃんの言葉が俺は信じられなかった。
一度失敗してるし、何よりも婆ちゃんに叱られた事で俺は他人を本気で思いやる事なんて出来ないと思ってたからだ。
「ねっ?心ちゃんは何もしてなくなんかないよ♪」
海野はそう言って無邪気な笑顔を見せてくれた。
何つーか………温かい奴だなコイツは………。
「ありがとな」
俺は産まれて初めて、無意識で『ありがとう』と言う言葉を使った。
「えっ?何?」
「なっ、何でもねーよ!ほらっ、さっさと帰るぞ!」
そう言って俺は海野をババチャリの後ろに乗せた。
そして俺は、ここでようやくショックな事実に気づいてしまった。
「……なぁ婆ちゃん、もしかして帰りもチャリ漕いで『家に帰りたい』って願わなきゃいけねー訳?」
「まぁ、そういう事じゃのぅ。ヒヤッヒャッヒヤッ!」
「心ちゃん頑張って~♪」
俺はそう言う女2人へのイライラを抑えながら、疲れきった足に鞭打ってババチャリを漕ぎ始めた。
そして唯菜の家を最後にチラリと横目で見て、幼い神様の幸せを願った。
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