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「お前、坂下ってあの坂下真由美か!?俺らの学校のマドンナ的存在じゃねぇか!!!」
「へぇ~、そんなに有名だったんだなあの女」
驚く祥をよそに、俺は平然とそう答えた。
「で、勿論OKしたんだよな!?」
「いやっ、断った」
俺がそう答えると、祥はさっきよりも驚いた顔をした。
正直かなり面白い。
「なんでだよアホ心一!お前理想高過ぎだぞ!!」
「別にそういう訳じゃねーよ。女なんてめんどくせーだけじゃねぇか」
俺はさらりとそう言って、近くの椅子に腰を下ろした。
自分で言うのもなんだが、俺は結構モテる方みたいだ。
ちなみに高校に入ってからコクられたのは坂下で18人目だ。
別に恋愛に興味がない訳じゃない。
ただ、彼女を作るより祥と馬鹿やってた方が楽しいと思うから、誰とも付き合わないだけだ。
まぁこんな恥ずい事、祥には口が裂けても言わねぇけどな。
「心一……」
「なっ、なんだよ?」
俺が色々と考えていると、祥が真剣な顔で俺の名前を呼んだから、俺は思わずたじろいてしまった。
「お前……男が好きなのか?」
「死ね」
俺はそう即答して、祥の頭を殴った。
「いってぇなぁ!お前が『女に興味ない』みたいな事言うから悪いんだろ!」
「お前のその解釈の仕方がおかしいだろ!俺はただめんどくせーと思うから誰とも付き合わねーだけだ!ったく」
俺はそう言うとバットを手に取り、もう一度バッターボックスに入った。
《全くアイツの頭の中は、訳がわかんねぇな…っと!》
そう思いながら俺が打ったボールは、やはりホームランの看板に叩きつけられた。
「なぁ祥、お前さぁ、神様っていると思う?」
俺はボールを打ちながら、なんとなく祥にそんな質問をしてみた。
「はぁ?神様?んなもんがいたら、人生苦労しないっての!」
「…そうだよな」
そうだ。神様なんている訳がない。
なのに、なんで俺は未だに婆ちゃんのあの言葉が忘れられないのだろう………。
そんな事を考えながら打ったボールはホームランどころではなく、地面をボテボテと情けなく跳ねて転がっていった。
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