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それにしても今日は教室の雰囲気がなんか違う。
やけに緑色が多いと思ったら、教室の一角に大きな笹が置いてあった。
「おい海野、あの笹は一体何なんだよ?」
「何って、笹は笹だよ♪それ以上でもそれ以下でもないの♪それから『海野』じゃなくて『雨音』って呼んでくれるって約束したじゃん!ちゃんとそう呼んでよ心ちゃん!」
「あぁ、わりぃわりぃ」
海野……じゃなくて雨音はそう言って頬を膨らませた。
早く学校や暮らしに馴れるためにクラスの皆とは下の名前で呼び合おうと提案されてシブシブ了承したのだが、女を下の名前で呼び捨てにするのは、俺はどーにも馴れない。
「なぁ山岡……じゃねーや官九郎、何で笹が教室にあるんだ?」
雨音に聞いても無駄だと判断した俺は、釣竿の手入れをしている官九郎にそう尋ねた。
官九郎は今日も麦わら帽子に半袖半ズボン姿。いつ見ても田舎少年のイメージ通りの姿をした奴だ。
「何じゃ心一、今日が何の日かわからんのか?」
「今日?………あっ、そういや七夕だな」
ここで俺はようやく今日が7月7日・七夕である事に気がついた。
「そうよ!心一の言う通り今日は七夕!と言う訳で今日は皆で願い事を書くわよ!」
先公はそう言って、山のような数の短冊の入った箱を取り出した。
一体いくつ願い事を書くつもりだよ欲張り教師め。
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