七夕の願い

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俺はその質問を適当に受け流して、エロジジイと別れた。 と言うより、先公が追い返したと言った方が正しいだろう。 「さぁ~てと、笹も飾り終わったし学校に戻るわよ」 神愛樹の周りに笹を飾り終えた先公が、満足そうに笹を見上げながらそう言った。 「今年は誰の願いが叶うんじゃろうな?」 「きっと私よ!控えめな願いにしといたからね!」 学校への道のりを歩きながら、先公が官九郎に自慢気にそう言った。 先公に雨音の書いた短冊を見せてやりてぇよ全く………。 俺がそんな事を考えながら小さく溜め息をついていると、雨音に後ろから肩を叩かれた。 「ねーねー心ちゃん♪」 「何だよ?」 「実は私、すっごく良い事思いついちゃったんだぁ♪」 そう言って雨音はとびきりの笑顔を見せた。 その笑顔に、恥ずかしながら俺は少し顔を赤くしてしまった。 「……まっ、まぁ言うだけ言ってみろよ」 「ん~とね、今夜心ちゃんのあの『お婆さんの自転車』で、短冊に書いてある皆の願いを叶えてあげるの♪ねっ♪いいアイデアでしょ?」 コイツはまたとんでもない事を言い出しやがった。 大体顔も知らない村の奴等の願いを俺が本気で願える訳ねーじゃねぇかよ……。 「って事で今晩8時に心ちゃん家に行くから♪」 「ちょっ!話勝手に進めんなよ!てか危ないからそんな夜中に外に出んな!俺がチャリで迎えに行くから!」 ………って、何言ってんだよ俺!! 「本当に?じゃあ待ってるね♪」 雨音はそう言って微笑んだ。 まぁいいか。 雨音は俺が『唯菜の宿った人形の持ち主を知っている』と嘘ついた事を官九郎や先公には黙ってくれているし、唯菜の両親も説得してくれたし、雨音には何かと借りがある。 仕方ない、付き合うだけ付き合ってやるか。
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